北海道バレル:北海道の「樽」が面白いことになる!
- 小西由稀
 - 8月6日
 - 読了時間: 3分
 
更新日:8月7日
日にちが経ってしまったけれど、7月25日に行われた「株式会社北海道バレル」設立の記者会見。北海道の集材のスペシャリストと家具生産販売の匠が組むことで、単に北海道産の樽というだけではなく、「木材の産地」や「樹種」を指定できる唯一無二の価値を持つ美しい樽が製造でき、それが造り手や届け手、飲み手の夢や可能性を膨らませる内容だったのでシェアを。

唯一無二のポイント
美しい家具づくりで知られる「カンディハウス」と、高い集材力を誇る「ノーザンフォレスト」が組んだからこそ実現した事業だということ。
カンディハウスの高い技術力※やデザイン力はもちろんだが、この事業の要は北海道産木材の【集材力】。カンディの藤田会長も「この集材力がなければこの事業は叶わなかった」と仰っていた。
※樽には「さね加工」という技術が使われ、通常の洋酒樽とは異なる造りだそうです。
では、集材力とは何か?
北海道各地で切り出された木材は産地ではなく、樹種で分けられ、集められるので、北海道産であることは明らかだけど、どこの山林のものかはわからなくなってしまうのだ。加えて、人気の樹種や流通に乗るような真っ直ぐ育った木はわずか1割。残りの9割は未利用材となり、チップに加工されることが多いそうだ。

そこで、ノーザンフォレストの竹次 修さん(北海道バレル代表取締役社長)が丁寧に各市町村の関係各所を回り、その9割に価値を生み出すべく協力を仰いできたという地道な背景がある。だからこそ、「〇〇町産の〇〇の木」を使うというトレーサビリティが実現。ストーリー性を高めることができる。
ウイスキー蒸留所やワイナリーが所在する地域の木材、個人なら(2.5リットル樽もある)ふるさとや思い入れのある地域の木材で…なんてことも可能なのだ。
樹種で異なる木目と味わい
12種類もの広葉樹から選べるということも大きな魅力。この日は、下記の12樹種から製造された樽がずらり。それぞれに木目の表情、色合いが異なり、その美しさにうっとり。
【ミズナラ、タモ、ニレ、セン、カバ、サクラ、ハン、キハダ、イタヤ、シナ、クルミ、アカシア】
※動画はアカシアからミズナラへと撮っています。
面白いのが、樹種によって染み出る風味がまったく異なるということ。この記者会見では樽の個性を伝えるため、甲類焼酎を約1カ月、それぞれの樽で貯蔵したものを試飲させてもらった。無色透明でクセのない焼酎が、動画の通り、樹種で色の出方が全然違う。
試飲するとミズナラ樽は王道ウイスキーのよう。タモ樽はどこかピートの香りさえするのだ。実はアイヌの食文化に欠かせないキハダ樽は複雑味があってスパイシー。クルミ樽やアカシア樽は甘みがふわり。
以前、厚岸蒸溜所がニューボーンを出していた時、小さな樽でニューボーンを独自に熟成させたものを飲ませてもらったことがある。若々しいニューボーンが、まるで何年も樽で寝かせたような味わいになっていて、樽の役割の大きさに驚いた経験がある。
これはバーやレストラン、個人宅で、いろいろな樹種で独自に樽熟成したら楽しそう!

既存樽のスペックは2.5リットル樽、30リットル樽。30リットル以上の特注樽も可能だという。すべて受注生産とのこと。気になるお値段は使用する木材によって異なるそうだが、一番小さな樽で12万円くらいからとのことだ。
記者会見後、興味のありそうな人にこの話をしているが、「酢をつくる時にも良さそうですね」という料理人の声もあった。
食のシーンの可能性を広げるであろう北海道バレルの取り組み。これからの動きが楽しみだ。
●北海道バレル https://hokkaidobarrel.co.jp/



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