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【レポート】気になるコラボvol.1

  • 小西由稀
  • 2023年8月4日
  • 読了時間: 7分

先日、私の妄想をカタチにした食事会企画「気になるコラボvol.1」の<昼の部>、<夜の部>が無事に終了。



タンドールを真ん中に置いて練りに練った、「茶月斎」小蕎隆広さん、「みち草バザール」森本健太さんの渾身の13品を楽しんでいただきました。

ご参加の皆さま、ありがとうございました!


メニューの記録を兼ね、レポートしたいと思います。

※画像のご協力をいただいたOさん、Pさん、Nさん、ありがとうございました。



当日はこの4人でおもてなしを。左からコニシ、茶月斎・小蕎さん、みち草バザール(以下みち草)・森本さん、そしてシゼントトモニイキルコト(以下シゼトモ)・ソガイハルミツさん。

ソガイさんは自然栽培の野菜・米の生産者で、この日はサービスマンとして支えてくださいました!



料理人のコラボには、大きく分けて2通りあると思います。

ひとつは、それぞれの世界観を持ち寄り、料理を交互に、あるいはパートで担当を決め、その日だけの特別なコース料理を創り出すケース。

もうひとつは、互いの感性や技術、経験を重ね合わせながら、コラボならではの新たな料理を生み出すケース。

今回はまさに後者のコラボでした。


お客さまから「どこのお店でも食べたことのない、初めて体験するおいしさ」という感想をいただきましたが、本当にその通りだったと思います。


<当日のコース>


1.つぶつぶ×緑

コショウダイのお刺身にスパイスを合わせた醤油、バジル、干し貝柱、ドライにしたシゼトモ産トマトを和えたひと皿をスターターに。


独特の残り香があるコショウダイとスパイス、バジルの相性がすばらしく、干し貝柱とドライトマトの旨味が良き合いの手に。



2.春巻き

ニンジンをホイルで包み、タンドールの底の熾火でじっくり2時間焼きました。これをクミン、セロリパウダーを忍ばせ、春巻きに。

ソースは、森本さん手作りのインドのヨーグルト「ダヒ」を添えました。


焼き芋のごとく火入れしたニンジンは、まるで安納芋のようなふくよかな甘さが広がり、ねっとりしつつみずみずしさもあって、こんな味わいがあのニンジンの中に潜んでいたのかと、驚きました。

恐らく、タンドールがなければ、春巻きにニンジンを使う発想は生まれなかったかも。一番意外性の大きかった一品かもしれません。



3.無問題

何のこっちゃというメニュー名ですが、無問題(モーマンタイ)=鯛を使いました。

福岡産の天然鯛をひと塩をして、油でコーティングしてから、タンドールで軽く焼きました。

付け合わせには、グリーンマンゴーの細切りとフェンネル、粗挽きの白胡椒を。


皮目はパリッと、中はふっくら。分厚い鯛を刺した鉄串を、タンドールの熾火に刺して火入れをします。タンドール内の輻射熱、熾火の火力、鉄串からじわじわ伝わる熱と、3つの異なるアプローチを操り、焼き師・森本さんの本領発揮。抜群の火入れで、鯛の香りも素敵でした。

グリーンマンゴーの甘さが鯛に寄り添うイメージ。



4.土用丑の日

同じ鰻でも、川に上らず、海で育った天草産の大きな「海鰻」を使用。小蕎さん自家製の豆豉を塗って、タンドールで焼きました。



甲殻類を食べて育った海の鰻は、味わいも脂もしっかり。豆豉に負けません。

付け合わせは、シゼトモ茄子をタンドールでホイル焼きし、グリーンカレーを合わせてペーストに。

これだけ食べると結構な辛さなんです。でも、鰻に合わせると、生命力あふれる味わいで、まさに夏の土用にぴったり(この日は土用の丑の日でした)。豆豉とグリンカレー、鰻の素晴らしいセッション。



5.瓜

焼き物が続くと体内に熱がこもるので、ここでクールダウン。

甘露(あじうり)とキュウリのさっぱりとした冷たいスープに、2のヨーグルトを浮かべました。


ゲストから「キュウリを使っているのに、一切青臭さがなく、統一感のある味わいに驚いた」とのお言葉が。

そうなんです。これはキュウリの皮を丁寧に均一に剥いているから。こういう細やかな仕事の積み重ねが味に表れ、伝わるって、嬉しいですよね。



6.喰え

対馬産のクエをマサラでマリネし、タンドールで火入れしました。

シソを加えたトマトのチャツネ、ダビデの星(オクラの品種)のスパイスお浸し、そして、クエのアラを炊いた白湯スープもお付けしました。


いわゆる、タンドールチキンのクエバージョン。なんという贅沢でしょう!スパイスを纏っても、クエはクエ。纏うというよりも、スパイスを従えているようなイメージ。チャツネともぴったり。

濃厚な白湯スープは、そのまま飲んでいただきました。



7.とうもろこし羊

とうもろこしの香り豊かなトルティーヤを焼き、中国のスパイス「マーガオ」をアクセントにしたちょっと甘めの羊の腸詰めと一緒に味わう一品。

腸詰めは3日干して寝かせて、直前にタンドールでパリッと焼いています。


腸詰めの下のペーストは、網焼きにしたパプリカ、青唐辛子でつくったピクルス(泡辣椒)、ガラムマサラを合わせたもの。

複雑な味わいが見事にひとつになった、夏らしい一品。



8.モツ焼き坦々

フレッシュな道東産のハチノスを、香辛料入りのタレ「水」で炊き、タンドールで表面を乾かして、千切りに。中東の軽いゴマペースト、黒酢、茶月斎特製の辣油で和えて坦々麺風に。


一度も冷凍していないハチノスは、食感がもっちり。坦々麺風の味付けがよく絡み、みち草でつくったスパイスナッツが良いアクセントに。

これは紹興酒にも日本酒にも合いそう。ゲストからメニューに加えてほしいとの声が多かった一品。



9.小樽南乳

一羽丸ごと南乳を塗った小樽地鶏を、焼き師・森本さんがタンドールでパリッと焼き上げました。

ゲストの目の前で、小蕎さんが中華包丁でダイナミックに切り分けるプレゼンテーションも。


南乳とは、豆腐を紅麹で発酵させた中国の調味料。南乳のおかげで、地鶏が柔らかくなりますね。

この南乳チキンで出色だったのは、塩水にくぐらせたミントを添えたこと。鶏を食べた後にミントを食べるとスッキリして、また鶏に手が伸びる…というおいしいループに。

ふたりの引き出しの多さには驚くばかりです。




10.シゼトモ

南インドのラッサムスープを、南乳チキンを召し上がっている途中でお出ししました。使っている野菜がシゼトモ産なので、このネーミングに。


黄色のトマトをベースに、辛さと酸味でお口直しを。ヒマラヤ岩塩「ベイチ」の硫黄の香りがアクセントに使い、仕上げています。



11.クルチャ

ナンの中に具材を入れて焼くクルチャ。今回の具は、ズッキーニのマーマレード、イランのレモンパウダー、チーズ工房「タカラ」の2年熟成のチーズを。


見た目は普通のクルチャと変わりないのですが、ズッキーニのマーマレードが絶妙な味わい!「クセ」の強いチーズを「個性」へと導く、ズッキーニの包容力というか、寄り添い方が素敵で。これは商品化してほしい。



12.あいがけ

バスマティライス(香り米)を真ん中に置き、茶月斎の麻婆豆腐とみち草のキーマカレーをあいがけにしました。キーマは、せたな町「村上牧場」の放牧牛を使用。


私が唯一、リクエストしたメニューです。それぞれで食べてももちろんおいしく、でも混ぜて食べるとさらにおいしい。このおふたりのコラボを象徴する、締めのひと皿だったと思います。これもメニューにオンリストしてほしい。



13.最後に

五香粉を加えたつくりたてのアイスクリームに、台湾で香ばしく焙煎したプーアール茶を注ぎ、アフォガードの仕立てで。

最後まで香りをキーにしたデザートで鮮やかに締めてくれました。



<コース完成までのプロセス>


ゲストからの質問が多かったので、これも記しておきます。

小蕎さん主導で組み立てたコースは、最初にアイデアを書き出し、さまざまな角度から肉付けをし、それから削いでいく。そんな風に、高みを目指してマインドマッピングを積み重ねていきました。


さながら小蕎塾のように、森本さんの引き出しを開けては持ち味を引き出しては磨き、小蕎さんの経験と一緒に収めていくような時間だったのではと、想像します。


コラボ中のふたりの表情を見ていると、とても良い時間を過ごしたんだなぁと思います。


小蕎さんが話で印象的だったのが、コチラ。


「(コースの中で料理の)1番、2番を決めるのはお客さまでいい。そのためには、うちらは全部、四番打者を揃えなければダメなんだよ」


どんな仕事にも通じる深い言葉ですよね。


当日朝まで微調整を繰り返してくださったおふたりには、感謝と敬意でいっぱいです。

ありがとうございました!


調子にのって、2回目、3回目も仕込み中。

次回は9月後半開催予定。

今月下旬にはリリースできると思います。

乞うご期待!




 
 
 

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